大阪地方裁判所 昭和24年(タ)20号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
(事實)
原告美代子は昭和二十三年二月三日被告と結婚式を挙行し、爾後被告方で事実上の夫婦生活を営んでいたが、四月二十四日頃実家に帰り内縁関係は消滅した。その後同年十一月十三日原告惠子が生れた。原告等は惠子の認知を、原告美代子はこの外立替支出した分娩費用の支払を請求する。
被告は美代子を診察した医師の証言、惠子の生れるとき立会つた助産婦の法廷外での供述、同助産婦の業務上の手帳の記載等より惠子の出生の時期を十一月ではなく九月と主張し、更に美代子が同年四月二十九日に右医師を訪れ、被告に無断で姙娠中絶の手続を依頼したことを指摘し惠子は自分の子ではないと爭う。
(判斷)
原告等勝訴。
裁判所は原告惠子が内縁関係の継続中に懷胎せられたことを認定した上次の通り判示した。
「婚姻と内縁関係、特に前認定の通り媒酌人を立てて結婚式を挙げ引続き同居した本件の如き内縁関係とは、事実的にこれをみれば単に戸籍法所定の婚姻届の有無という以外に差異として見るべきものはなく、夫婦の性生活という面からみれば実質的には法律上の夫婦のそれと何等変るところはないのであるから、前記民法の規定(註、第七七二條)によつて内縁関係に於て子の嫡出性を推定することはもとよりできないが、少くとも右規定の趣旨に従い父子関係の存在を推定することは許されると解すべきである。而して本件の場合惠子が美代子と被告との内縁関係継続中に懷胎せられたことは右に認定した通りであるから、惠子は被告の子であるとの推定を受けるのであり、この事実を爭う被告に於て反証を挙げない限り右推定を覆えすことができないものと言うべきである」
そうして原告美代子が被告の承諾を得ないで姙娠中絶の手続を依頼したことは之を認めたが、それは美代子が嘗て患つたことのある肺尖カタルの再発によるものであり、しかも被告に対して承諾を求めたが被告が之にに応じなかつたものであると認定した外被告の反証を逐一排斥し、被告の全立証によるも前推定を覆えし得ないと断じて認知の請求を認容した。
次に分娩費用の請求については、原告側に於て之を支出したことを認定した上次の通り判示して分娩費用の請求をも認容した。
「内縁関係に於て子の分娩費用を夫婦のいずれが負担すべきかについてはよるべき明文はないのであるが、夫婦の法定財産制に関する民法第七百六十条の趣旨はこれをこの場合に類推するを相当とするのであり、右趣旨からすれば本件の如く原告美代子が被告方に嫁入し、その特有財産としては嫁入荷物たる衣類調度品の外には何等特別の資財もなく、また何等の收入もない(この事実は本件口頭弁論の全趣旨に徴しこれを認めるに足る。)場合においては夫であり又父である被告においてこれを負担するのを相当とするのであり、右事実関係からすれば右分娩費用は原告美代子において被告の為これを支出したものであり、同原告は被告に対しその償還請求権を有するものと言わねばならぬ。」